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建築公害に挑戦した35年
日照権闘争と市民運動の歴史
【発行日】 2006年10月1日
【編 集】 ウィズたからづか編集部
【発 行】 佐藤 きよ子
【印刷・製本】 あさひ高速印刷株式会社 | 無線綴じ
日照権がまだ認められていない1966年、西宮市の自宅近くに建つマンションによって日照が奪われることになったのが、建築公害に取り組むきっかけになったという佐藤きよ子さん。以来、建築基準法を徹底的に勉強し、住民の立場から行政、業者に意見を呈し、見直しをさせてきた。時には実力行使せざるを得ないケースもあり、佐藤さんの曲った指にその歴史が刻まれている。
運動が紹介された新聞切抜きは500枚余になり、建築公害に取り組んだ住民運動の歴史を後世に残しておきたいと今年、87歳を迎えた佐藤さんは、358ページに及ぶ自分史でもあり、貴重な資料でもある1冊を完成させた。
新聞切抜きは昭和43年(1968)から始まる。「私も太陽をもらう権利がある」と書かれたたて看板の前で日照権を求める裁判の署名運動をする佐藤さんら婦人会の活動が紹介されている。そのころからマンションの建設ラッシュで日照権問題はあちこちで起こり、佐藤さんらは、建築基準法の不備を訴え、西宮市に建築協定の条例化を求め、裁判で市民の立場から証言したりと粘り強い運動を続けてきたことが切り抜きからもよくわかる。そして今では日照権は一定の基準をもうけ認められるようになった。54年(79)の新聞には「12年間にわたる主婦の運動がやっと実った。無秩序な開発を抑えて調和の取れた街づくりに業者・行政・住民が一体となって取り組む条例が整った」と西宮市夙川地区で高層建築規制協定(高さを4階におさえる)を実現させた佐藤さんのコメントが掲載されている。行政任せではなく「自分たちの権利は自分で守らねば」との信念で、この地域に住む権利者1800人の同意を得るという難題を果たした。
高層ビルによる風害にも眼を向け、49年には京都大学防災研究所の先生を招いたセミナーを開催、近隣から行政職員85名参加、という記事が掲載されている。夙川駅前整備にも市民の意見を反映させるなど35年に及ぶ建築公害への挑戦に住民運動の力強さが伝わってくる。この出版は、佐藤さんが支援し、ともに運動をしてきた人たちからの反響が大きく「連日、嬉しい電話がかかってきます。かつての同士と旧交を温めています」という。元気なうちに関西新国際空港西宮沖案撤回の運動記録や自分史の執筆も手がけたいと、気持ちはいつも前を向いている。
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